安静にしているのに脈が速い状態や、脈が極端に遅い状態は、不整脈や全身の病気によって起こることがあります。
一方で、運動、発熱、緊張、睡眠などに伴って、一時的に脈拍が変化することもあります。
脈拍数だけで病気かどうかを判断することはできません。
脈が速い、または遅い状態を繰り返す場合や、息切れ、めまい、失神、胸痛などを伴う場合は、心電図による確認が必要です。
脈拍数はどのくらいが正常ですか?
成人の脈拍数は、安静時には1分間に60回から100回程度が一つの目安です。
日本循環器学会では、心拍数がおおよそ1分間に100回以上の状態を頻脈、50回以下の状態を徐脈と説明しています。
ただし、正常な脈拍数には個人差があります。
運動習慣のある人や睡眠中は、病気がなくても脈拍が50回以下になることがあります。
反対に、運動、発熱、緊張、脱水などがあると、正常な反応として脈拍が100回を超えることがあります。
安静時の脈拍が継続して速い、または遅い場合には、その原因を調べます。
脈が速くなる原因は何ですか?
脈が速くなる原因は、正常な反応によるものと、不整脈によるものに分けられます。
正常な反応として脈が速くなる場合
運動や発熱などによって体が多くの血液を必要とすると、心臓は脈拍数を増やして対応します。
このような状態を洞性頻脈と呼びます。
洞性頻脈の原因には、次のものがあります。
- 運動
- 発熱
- 脱水
- 貧血
- 甲状腺機能亢進症
- 強い緊張や不安
- 睡眠不足
- 飲酒
- カフェインの過剰摂取
- 一部の薬剤
洞性頻脈では、脈が徐々に速くなり、原因がなくなると徐々に元へ戻ることが一般的です。
不整脈によって脈が速くなる場合
突然脈が速くなった場合や、安静にしていても速い状態が続く場合は、頻脈性不整脈の可能性があります。
代表的なものには、次の不整脈があります。
- 発作性上室性頻拍
- 心房細動
- 心房粗動
- 心房頻拍
- 心室頻拍
発作性上室性頻拍では、脈が突然速くなり、突然元に戻ることがあります。
心房細動では、脈が速くなるだけでなく、脈の間隔がバラバラになることがあります。
心室頻拍は、めまいや失神などを引き起こすことがある重い不整脈です。
脈が遅くなる原因は何ですか?
脈が遅くなる原因には、体質や睡眠などによる生理的な徐脈と、心臓の電気信号の異常による徐脈性不整脈があります。
病気ではない徐脈
次のような場合は、病気がなくても脈拍が遅くなることがあります。
- 睡眠中
- 運動習慣がある
- もともとの脈拍が低い
脈拍が50回以下でも、症状がなく、運動時に脈拍が適切に増える場合は、治療を必要としないことがあります。
徐脈性不整脈
心臓を動かす電気信号が正常に作られない場合や、電気信号が心室まで伝わらない場合には、脈拍が遅くなります。
代表的な徐脈性不整脈には、次のものがあります。
- 洞不全症候群
- 房室ブロック
- 徐脈性心房細動
洞不全症候群は、心臓の電気信号を作る洞結節の働きが低下する病気です。
房室ブロックは、心房から心室へ伝わる電気信号が遅れたり、途中で途切れたりする状態です。
脈が遅くなることで心臓から送り出される血液が不足すると、めまい、失神、息切れ、疲れやすさなどが現れます。
薬によって脈が遅くなることはありますか?
一部の薬には、脈拍を遅くする作用があります。
代表的なものには、β遮断薬、一部のカルシウム拮抗薬、ジギタリス製剤、抗不整脈薬などがあります。
これらの薬は、高血圧、狭心症、心不全、不整脈などの治療に使用されます。
脈が遅いからといって、自己判断で薬を中止してはいけません。
薬の中止によって血圧や不整脈が悪化することがあるため、医師が脈拍数や症状を確認して調整します。
頻脈や徐脈ではどのような症状が出ますか?
脈が速すぎる場合も遅すぎる場合も、心臓が全身へ十分な血液を送り出せなくなることがあります。
| 脈の状態 | 起こりやすい症状 |
|---|---|
| 脈が速い | 動悸、息切れ、胸の不快感、めまい、疲労感 |
| 脈が遅い | めまい、失神、息切れ、疲れやすさ、運動能力の低下 |
| 脈が速く不規則 | 動悸、息切れ、胸のざわつき、疲労感 |
| 速い脈と遅い脈を繰り返す | 動悸が止まった後のめまい、ふらつき、失神 |
洞不全症候群の一つである徐脈頻脈症候群では、速い不整脈が停止した直後に脈が極端に遅くなり、めまいや失神を生じることがあります。
早めの受診が必要な症状
脈拍数だけで緊急性を判断することはできません。
脈が速い、または遅い状態に加えて、次の症状がある場合は、早めに医療機関を受診してください。
- 胸の痛み
- 息苦しさ
- めまいやふらつき
- 意識が遠のく感じ
- 強い倦怠感
- 動悸が長く続く
- 脈の異常を繰り返す
意識を失っている場合や、強い胸痛、著しい呼吸困難が続いている場合は、緊急の受診を検討してください。
症状が軽くても、安静時の頻脈や徐脈を繰り返す場合や、以前と比べて脈拍が大きく変化した場合もご相談ください。
家庭で脈拍を測る方法はありますか?
脈拍は、手首の親指側に反対側の人差し指、中指、薬指を軽く当てて測ります。
1分間のおおよその脈拍数も診断の参考になります。
測定するときは、脈拍数だけでなく、脈の間隔が規則的か、バラバラかも確認します。
家庭用血圧計やスマートウォッチに表示された脈拍数も参考になります。
ただし、不整脈があると、心臓の拍動数と手首で触れる脈拍数が一致しない場合があります。
測定機器の数値だけで、不整脈の有無を確定することはできません。
脈が速い、遅いときにはどのような検査を行いますか?
頻脈や徐脈の診断では、症状があるときの心電図が役立ちます。
必要に応じて、次の検査を行います。
12誘導心電図
診察時の心拍数、心臓のリズム、電気信号の伝わり方を確認します。
心房細動、発作性上室性頻拍、洞不全症候群、房室ブロックなどの診断に使用します。
ホルター心電図
小型の心電計を装着し、日常生活中の心電図を記録します。
一日の中で脈拍がどのように変化するか、頻脈や徐脈が起きていないか、症状と心電図が一致するかを確認します。
心臓超音波検査
心臓の動き、心機能、弁膜症、心臓の大きさなどを確認します。
頻脈や徐脈の背景に心臓病がないかを調べます。
血液検査
貧血、甲状腺機能、電解質異常など、脈拍に影響する原因を確認します。
すべての患者さんにすべての検査が必要なわけではありません。
症状の頻度、年齢、既往歴、服用している薬、診察結果に応じて必要な検査を選択します。
頻脈と徐脈はどのように治療しますか?
頻脈の治療は、不整脈の種類や原因によって異なります。
発熱、貧血、脱水、甲状腺機能異常などが原因の場合は、その原因を治療します。
頻脈性不整脈では、薬物治療やカテーテルアブレーションなどを検討します。
徐脈でも、症状がなく心臓の働きに問題がなければ、治療を必要としないことがあります。
一方で、洞不全症候群や高度な房室ブロックによって、失神、めまい、息切れなどが起きている場合は、ペースメーカー治療を検討します。
治療の必要性は、脈拍数だけでなく、症状、心電図所見、基礎疾患、服用している薬などをもとに判断します。
よくある質問
安静時の脈拍が100回を超えたら病気ですか?
運動直後、発熱、緊張、脱水などがあれば、正常な反応として100回を超えることがあります。
数分間安静にしても頻脈が続く場合や、症状を伴う場合は原因を確認します。
脈拍が50回以下でも大丈夫ですか?
運動習慣のある人や睡眠中は、病気がなくても50回以下になることがあります。
めまい、失神、息切れ、疲れやすさなどを伴う場合や、以前より脈が遅くなった場合は検査が必要です。
血圧計で脈拍異常と表示されたら受診した方がよいですか?
一度だけの表示で不整脈とは断定できません。
安静にして測り直しても繰り返し表示される場合や、脈が速い、遅い、バラバラと感じる場合は心電図で確認します。
脈が遅い場合はペースメーカーが必要ですか?
脈が遅いという理由だけで、すべての人にペースメーカーが必要になるわけではありません。
徐脈の原因、症状、心電図所見などから適応を判断します。
春日部市で脈の速さや遅さが気になる方へ
脈が速い、または遅い原因には、体の正常な反応、薬の影響、不整脈、心臓以外の病気などがあります。
脈拍数だけでは原因を判断できないため、繰り返す場合や症状を伴う場合には、心電図による確認が必要です。
はた内科・不整脈クリニックでは、12誘導心電図、ホルター心電図、心臓超音波検査、血液検査などを用いて、頻脈や徐脈の原因を調べます。
春日部市藤塚周辺で、脈が速い、脈が遅い、脈拍異常を指摘されたなどの心配がある方はご相談ください。
※本記事は一般的な医療情報を提供するものであり、個別の診断に代わるものではありません。
執筆、監修
はた内科・不整脈クリニック
院長 畠 信哉
日本内科学会認定 総合内科専門医
日本循環器学会認定 循環器専門医
日本不整脈心電学会認定 不整脈専門医
参考資料
- 日本循環器学会、日本不整脈心電学会「2022年改訂版 不整脈の診断とリスク評価に関するガイドライン」
- 日本循環器学会、日本不整脈心電学会「2020年改訂版 不整脈薬物治療ガイドライン」
