健康診断の結果に「心電図異常」「要再検査」「要精密検査」と書かれていても、必ず重い心臓病があるとは限りません。
期外収縮、洞性徐脈、右脚ブロックなど、経過観察となることが多い所見もあります。
一方、心房細動、房室ブロック、ST-T異常など、症状がなくても確認が必要な所見もあります。
判定名だけで危険性を決めず、実際の心電図波形、症状、過去の心電図、心臓病の有無を確認します。
健診の心電図検査では何が分かりますか?
12誘導心電図は、心臓から発生する電気信号を体の表面から記録する検査です。
心拍数や脈の規則性だけでなく、電気信号が心臓内を伝わる経路や、心筋への負担を示唆する変化を確認できます。
主に次の異常が見つかります。
- 脈が速い、または遅い
- 脈が不規則
- 期外収縮
- 心房細動
- 房室ブロック
- 脚ブロック
- ST-T異常
- 心肥大を示唆する変化
- 異常Q波
- QT延長
- WPW症候群
心電図だけで心臓病を確定できるとは限りません。
反対に、健診時の心電図が正常でも、短時間しか起こらない発作性不整脈や狭心症が隠れていることがあります。
健診でよく指摘される心電図異常には何がありますか?
| 健診の主な所見 | 考えられる状態 |
|---|---|
| 洞性徐脈 | 脈がゆっくりしている |
| 洞性頻脈 | 脈が速くなっている |
| 上室性期外収縮 | 心房付近から予定より早い拍動が出る |
| 心室性期外収縮 | 心室から予定より早い拍動が出る |
| 心房細動 | 脈の間隔が不規則になる |
| 房室ブロック | 心房から心室への電気信号が伝わりにくい |
| 右脚ブロック、左脚ブロック | 心室内の電気信号の伝わり方に遅れがある |
| ST-T異常 | 心筋への負担や虚血などを示唆する場合がある |
| 左室肥大 | 高血圧などによる心臓への負担を示唆する |
| 異常Q波 | 過去の心筋梗塞などを示唆する場合がある |
| QT延長 | 心室の電気的回復に時間がかかっている |
| WPW症候群 | 通常とは異なる電気の通り道がある |
同じ判定名でも、波形の程度、症状、年齢、持病によって対応は異なります。
洞性徐脈とは何ですか?
洞性徐脈は、心臓の正常なリズムを作る洞結節から拍動が始まっているものの、脈拍数が少ない状態です。
運動習慣のある方や睡眠中には、病気がなくても脈が遅くなることがあります。
症状がなく、心拍数が必要に応じて増える場合は、治療を必要としないこともあります。
ただし、めまい、失神、息切れ、強い倦怠感を伴う場合は、洞不全症候群などを調べます。
期外収縮とは何ですか?
期外収縮は、通常より早いタイミングで心臓が収縮する不整脈です。
心房から起こるものを上室性期外収縮または心房期外収縮、心室から起こるものを心室性期外収縮と呼びます。
健康な方にもみられますが、頻度が多い場合、連続して出る場合、複数の波形がある場合、心臓病を伴う場合は詳しい評価が必要です。
通常の心電図では短時間しか記録できないため、期外収縮の回数や出現時間を調べるにはホルター心電図が役立ちます。
心房細動を指摘された場合はどうすればよいですか?
心房細動は、心房が細かく不規則に動き、脈の間隔がバラバラになる不整脈です。
動悸や息切れを感じる方もいますが、自覚症状がないまま健診で見つかることもあります。
心房細動では、心臓内にできた血栓が脳の血管へ流れ、脳梗塞を起こすことがあります。
心房細動を指摘された場合は、年齢、高血圧、糖尿病、心不全、脳梗塞の既往などを確認し、脳梗塞予防の薬が必要か判断します。
症状がなくても放置せず、循環器内科へご相談ください。
房室ブロックや脚ブロックとは何ですか?
房室ブロックは、心房から心室へ電気信号が伝わりにくくなる状態です。
軽度で経過観察となるものもありますが、高度な房室ブロックでは脈が遅くなり、めまいや失神が起こる場合があります。
脚ブロックは、心室内を電気信号が伝わる経路の一部に遅れがある状態です。
右脚ブロックは、心臓に明らかな病気がない方にもみられます。
左脚ブロックや新たに出現した脚ブロックでは、心臓超音波検査などで心臓の構造や機能を確認することがあります。
ST-T異常とは何ですか?
ST-T異常は、心室の電気的な回復過程に変化がみられる状態です。
高血圧による心臓への負担、心筋虚血、心筋症、電解質異常、薬剤の影響などによって現れることがあります。
体質や測定条件によってみられる場合もあり、ST-T異常だけで狭心症や心筋梗塞とは診断できません。
胸痛や息切れがある場合や、以前の心電図から変化している場合は、詳しい検査が必要です。
健診心電図の自動判定は正確ですか?
心電図検査では、機械が波形を解析した自動判定が表示されることがあります。
自動判定は診断を補助する機能であり、筋肉の動きや電極の位置による波形変化を異常と判定する場合があります。
最終的には医師が実際の波形を確認し、症状や過去の心電図と合わせて判断します。
健診結果に判定名が記載されている場合は、可能であれば心電図波形も確認できると比較に役立ちます。
心電図異常とともに受診を急いだ方がよい症状はありますか?
次の症状がある場合は、結果票だけを見て経過観察せず、早めに医療機関へ相談してください。
- 胸の圧迫感や締めつけ感
- 動悸が長く続く
- 息切れ
- めまい、眼前暗黒感
- 失神
- 脈が極端に速い、または遅い
- 運動中の胸痛や失神
- 心電図異常が以前より悪化している
強い胸痛、著しい呼吸困難、意識障害が続く場合は、救急相談または救急要請を検討してください。
心電図異常にはどのような精密検査を行いますか?
12誘導心電図の再検査
健診結果を確認しながら、現在の心電図を記録します。
一時的な変化か、継続している異常かを評価します。
ホルター心電図
日常生活中の心電図を記録し、期外収縮の回数、心房細動、頻脈、徐脈などを調べます。
症状が起きた時刻と心電図を照らし合わせることもできます。
心臓超音波検査
心臓の動き、壁の厚さ、心機能、弁膜症などを確認します。
心電図異常の背景に、心臓の構造的な病気がないかを調べます。
血液検査
貧血、甲状腺機能、電解質異常など、不整脈や心電図変化の原因となる状態を確認します。
精密検査が必要かどうかは、心電図所見と症状を踏まえて判断します。
よくある質問
「要精密検査」は重い病気という意味ですか?
精密検査によって確認が必要という意味であり、重い病気が確定したわけではありません。
再検査の結果、治療を必要とせず経過観察となる場合もあります。
症状がなくても受診した方がよいですか?
心房細動や房室ブロックなど、自覚症状がないまま見つかる不整脈があります。
「要受診」「要精密検査」と判定された場合は、症状がなくてもご相談ください。
昔から同じ異常を指摘されていますが、検査は必要ですか?
以前と変化がなく、過去に詳しい検査を受けている場合は、経過観察となることがあります。
ただし、年齢や持病の変化によって評価が変わるため、過去の検査結果と比較して判断します。
スマートウォッチが正常なら問題ありませんか?
スマートウォッチの記録は参考になりますが、12誘導心電図で分かるすべての異常を確認できるわけではありません。
健診で異常を指摘された場合は、スマートウォッチの表示だけで判断しないでください。
春日部市で健診の心電図異常を指摘された方へ
健診の心電図異常には、経過観察でよいものから、治療や定期的な確認が必要な不整脈まであります。
はた内科・不整脈クリニックでは、12誘導心電図、ホルター心電図、心臓超音波検査、血液検査などを用いて、心電図異常の原因と治療の必要性を判断します。
春日部市藤塚周辺で、健診の心電図で期外収縮、心房細動、徐脈、房室ブロック、脚ブロック、ST-T異常などを指摘された方はご相談ください。
※本記事は一般的な医療情報を提供するものであり、個別の診断に代わるものではありません。
執筆、監修
はた内科・不整脈クリニック
院長 畠 信哉
日本内科学会認定 総合内科専門医
日本循環器学会認定 循環器専門医
日本不整脈心電学会認定 不整脈専門医
参考資料
- 日本循環器学会、日本不整脈心電学会「2022年改訂版 不整脈の診断とリスク評価に関するガイドライン」
- 日本循環器学会、日本不整脈心電学会「2020年改訂版 不整脈薬物治療ガイドライン」
- 日本循環器学会「2025年改訂版 学校心臓検診のガイドライン」
